memorandum

試考錯誤

「来る。」

冬のホラー映画祭!第3弾!

キャスト・監督共に豪華。

楽しみで、公開日初日に見てきました。

普通に私は好きだったけど、ホラー映画好きが喜ぶかは微妙?というなかなか日本の実写ホラーでは斬新な映画でした。

以下、原作含めたがっつりとネタバレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

端的にこのホラー映画をジャンルわけするなら、前半サイコホラー・後半オカルト特撮。

原作「ぼぎわんが、来る。」も読んだが、かなり脚色されており、原作も人の弱さを描いているが、映画では中島監督らしくより毒々しくいやらしく人を描いている。

あと、原作ではなかったかなり派手で大規模なお祓いシーンがとてもかっこいい。「オカルト版巨災対」「霊能者大戦」「心霊地球防衛隊」などなど、観客がキャッチコピーをつけたくなるような日本の実写ホラー映画では恐らくかつてない規模のパワー除霊がビジュアル化されていた。

原作ではシリーズのヒロインである小松菜奈演じるキャバ嬢霊媒師・真琴とその姉、松たか子演じる日本一の霊媒師・琴子のキャラクターもとてもよく、オカルト巨災対と合わせて余りホラーは見ないアニメヲタクにこそ見て欲しいホラー映画になったと思う。

原作でもあるけど、ファブリーズ除霊とか、タバコで除霊したりもとても面白かったし。映画オリジナルの全国からかき集められた霊能者…とくに宮司が向かう新幹線で何かを察知して別々の駅で降りて「誰か一人でもたどり着いたら上出来や」とか言うシーンは痺れたし、カプセルホテルで宮司の正装に着替える描写も良すぎた。

この辺りの画…ビジュアルの強さがすでにもともとアニメヲタクの私は大好きなので、映画館で見て本当によかった。

さすが、キャッチコピー通りエンタメとして最高。

 

しかし、ホラー映画としてどうなのか?

 

まず、とても私が評価してるのは映画での「ぼぎわん」の描写について。原作では“髪が長い身体は灰色の口のみのお化け”が本体として“ぼぎわん”は描かれるが、映画ではひたすらに狙う相手の知り合いの姿や声を借りており、最後琴子が闘ったのも破壊の痕跡(血液やひび割れ、風圧)でしかなかった。化身というのか予感として…アイコンとして青虫が登場するが決してそれは本体ではない(私は青虫が苦手なのもあるけど、そういうアイコンみたいなものもない方がよかった気さえする)。

それによって①ジャパニーズホラーにおいてリングからの流れをひたすらに引きずって使い古された髪の長い女の幽霊とは一線を画して、内容も相まってリング以前の日本では、恐怖の対象としてよりポピュラーだったはずの“水子”“祟り神”の性格を強く持った。

②原作は「人に"恐怖"を与えるのは対象それ自体の姿形や性格ではなく“人々に恐れられている”ということ自体ではないかと仮説を立てたつまり、おばけの由来や実害そのものよりも、名前とそれが“怖いという触れ込み”が不気味さと恐怖を掻き立てる」(資料参照)と考えられ書かれているが、よりその本質を映画のぼぎわんは上手く表現出来てるのではないか。

という二点でとてもホラー映画として評価できるものと考える。

わざわざリーフレットでぼぎわん伏字にしてる割にあっさりぼぎわんの名前を明かすのも、別にもったいぶりたいっていうより“ぼぎわん”という言葉がお化け程度の幅広い言葉であることと、作者の考察を思うと“あれ”程度が的確ってこと…かな?と思える…ここまでは原作の読まないと分からないが。

映画見て、ちょっと「もやった」人は是非原作読んでください。原作のコンセプト?(みんなが怖がってる事実こそが怖い)としては怪しいけど、がっつりぼぎわんの正体が描かれる心霊ミステリーな原作なので。

 

ただ、以上の理由でジャパニーズホラー映画の改革の布石になってくれたらいいとは思うものの、実際の怖がらせるネタはホラー映画好きなら慣れてしまった“あるある”ものなので、余り怖くはないのが残念。

私は原作でも描写され、映画では夢や記憶として描かれた、ガラスの向こうになんとなく何かいる…という気配を表す蠢く灰色の何かをもっと上手く使えればよりよかったと思う。本体として灰色の気持ち悪いモンスターを創造するとか、赤い方の女の子というアイコンを使う以上にそれを上手く使えば、じんわりと怖がらせてくれるホラー映画の傑作になった気がする。素人考えだけど。

 

ホラー映画好き全員に評価されるかはさておき、低迷してるジャパニーズホラーの起爆剤になれる要素がふんだんにあり、エンタメとしては最高にかっこよく面白いいい映画と思う。

 

資料・作者インタビュー「https://store.kadokawa.co.jp/shop/pages/interview_004.aspx